伝統と秩序、革新と正義「ヒューマン・ファクター」について、その2
前述した文章がひどかったので、付け加えます。
伝統とは主にこの世界の現存する秩序の中での平和を望み、
革新とは正義を求める闘いのことを言うと思う。
この小説の隠された主題がその二つの価値の闘争であることは読めば自明であり、
単なるスパイ小説を一歩飛び出した、スケールがあります。
伝統の側はこの小説では、手段を選ばない攻撃をするのは、一つに現存する秩序を守るためであり、スパイが危険をおかして、ミッションを追行しようとするのは、理想の正義を求めてのことです。
その戦いを見守るグレアム・グリーンの哀しげな筆致はスパイ小説の中で群を抜いていると思います。
あえて、スパイ小説と書きましたが、それは私のこの作家に対する無知ゆえのことかもしれません。