アパートで。その2(このシリーズ・最終回)・短編小説
まいさんが、抱きしめられながら言った。
「弟の遺体は私が確認したの。母にはさせられなかった。人間てね、モロイよ。ほんとにモロイの。特に小さな子は。」
そういうと、まいさんは服を脱ぎ始めた。すると、まいさんが私の首に両手を回し、覆いかぶさってきた。私は柔らかな重力の重みを感じ、自分の情欲に開き直った。
二人で長く互いの体をむさぼりあった。まいさんは私を抱きしめながら、私を受け入れた。しばらくして、ついに、私は長い長い射精を床に落とした。私たちは黙りあった。静かな時が流れた。
まいさんはおもむろに立つと、服を着はじめた。「見ててもいいよ。」細身の体の胸にブラをつけるところだった。
「いいよ。」と私は体ごと後ろを向いた。私にその資格がないように思われた。
着替え終えるとまいさんは「帰る」と言った。
「これって、一時の快楽なのかな。?暇つぶしの。」とまいさんは言った。
そうではないと言いたかったが、自信がなかった。月給12万5千円の私に何ができるだろう。
私は立ち上がり、まいさんを後ろから抱きしめた。私はまいさんをものにしたいと感じた。
「俺もがんばるから。」私はよくわからないことを言った。遅すぎるかもしれない。でも、このチャンスを失いたくはなかった。
もっと、厳しく荒々しい労働の世界に再び戻る決意をした。そしたらいずれは・・・
後ろから抱きしめながら、「俺がまいさんの生きる意味になりたい。」と浅知恵を出して言った。まいさんは私の手を振りほどき、泣きながら小走りに部屋を去った。
それから、しばらく何をしていいか、私にはわからなかった。
自分への嫌悪で私は泣きに泣いた。
(終わり)