ささやかな冒険
Cheryl Lynn - Got To Be Real (with lyrics)
朝、仕事に行く途中に、必ず寄るローソンの女性の店員に、覚悟を決めて、メルアドと電話番号を渡した。まるで他に誰もいない、そして、あたかも、前からの親しい顔見知りだったように、おにぎりを買うついでという風に、白いメモ帳の破れに、メルアドとイエデンの電話番号を書いた紙切れを、スーッと彼女の空いた左の手のひらに渡したというより、引き込まれ、彼女がその紙切れを握ってくれた。
アパートの部屋に帰宅したら、疲れも忘れ、まるでそこがいつもの自分の部屋ではないというくらい、ドキドキして、起動の重いパソコンの本体のスイッチを押して、黒い画面を凝視しながら、やがて、パソコンの画面は青に変わり、富士山の壁紙のスタート画面に切り替わり、緊張しながら、メールソフトを開いた。
メールソフトには、メールが何件か入っていて、その中にローソンの女性店員のものと思われる、メールを開いた。
メールには
「仕事お疲れ様。待ってたよ。トモダチダネ。」と文言がそれだけ。
私は有頂天になり、何か、世界の半分は自分のものであり、その幸福を友達たちに分け与えたくなるような傲慢ともいえる幸福感に浸った。
ただ、メールのその文言のためだけに。まるで、十代後半の子供のように。